奥州街道は「五街道」のひとつです。
五街道は、東海道・中山道・甲州街道・日光街道・奥州街道の総称です。
徳川家康が1601(慶長6)年からおよそ7年かかって整備した日本の幹線道路(主要街道)で、江戸幕府の道中奉行が管轄していました。
いずれも江戸・日本橋が起点で、特に江戸と京都を結ぶ表通りの東海道と、裏通りの中山道が重要視されました。
奥州街道の概要
奥州街道の特徴やその歴史沿革を簡単にみてみましょう。
百十四の宿場、長い長い東北ロード
奥州街道は、時期や管轄、または捉え方により、定義づけが複雑化するため、本稿では先に一応の前提条件を定めます。即ち、東京都日本橋から北海道の函館五稜郭までの、宿場にして114次のルートを奥州街道として扱うものとします(後述の街道マップと宿場一覧においても同様)。
当サイトは、「探索」ではなく「漫遊」を趣旨としているので、極端に言えばある程度の裏付けのある場所を特定してそれを実感できさえすれば良いと考えています。以降の解説などにおいても諸説を「単純化」してしまうこともありますがご了承いただければ幸いです。
さて、江戸期以降の実際、奥州街道を先ず大きく分けて、白河(福島県)を境に規定することが多いようです。
白河以南…日本橋から宇都宮(日光街道と同じ道程:17宿)と、宇都宮から白河まで(10宿)。
白河以北…白河から三厩及び箱館(87宿)
繰り返しますが、当サイトの示す資料はこの白河を挟む南北両方を一本の奥州街道として捉えます。
道中奉行の管轄は白河以南だった
上述した分割について、五街道制定当時は幕府道中奉行の管轄は白河以南とされており、しかも日本橋から宇都宮までは日光街道でもあることから、厳密には宇都宮から白河までの10宿のみを奥州街道と定めていたようです。
また、白河以北のルートにしても、それぞれ奥街道・仙台道中・松前道などという歴とした名称があり(管轄もそれぞれ沿道の諸藩であった)、敢えて奥州街道とみなす必要もなかったでしょう。
それでも、白河以北の遠く青森までの道程も次第に奥州道中と称されるようになり、江戸期後半にかけて蝦夷地警備往来の重要度が高まったことで主要街道を一本化して考えることも自然となりました。
多くの大名が利用、観光の往来も盛んだった
奥州街道は多くの大名が参勤交代の公用路として利用しました(奥州・羽州・松前だけで29の大名家)。
また、江戸期に開花した寺社参詣(奥州平泉、東照宮、伊勢参りなど)のブームで、庶民にとっても観光のための欠かせないルートとなったようです。
この街道でも、偉人や芸文作家らの記録が数多くのこされています。
松尾芭蕉、菅江真澄、伊能忠敬、古川古松軒、高山彦九郎、吉田松陰などのビッグネームが並びます。
また、江戸期以前の同じ道程にも中世英雄たちの栄枯盛衰の舞台が揃っていて、当時の通人の憧れともされていました。
奥州街道 全体マップ・宿場一覧
宿場周辺は、各街道の特に重要なポイントで、今なお多くの歴史の跡を感じることができる場所です。
皆さんも宿場の近くを訪れることがあったら、是非この記事や付随する記事を簡易マニュアルとして活用し、歴史漫遊を楽しんでください。
奥州街道は、現在の東京都・埼玉県・茨城県・栃木県・福島県・宮城県・岩手県・青森県・北海道のコースです。
全体マップ
各宿場のポイント(ピン)には、可能な限りその宿場の本陣や脇本陣(跡)を選ぶようにしましたが、見つからない場合は他の宿場のランドマークに替えて選んでいます。
宿場一覧
奥州街道には、日本橋(東京都)から箱館奉行所(北海道)までの間に114次(諸説あり)の宿場が設けられ、各宿場には明確な目的を持った様々な施設が用意されていました。
以下の一覧には、番号・宿場名・現在の所在地・その他の情報などを表記しています。
- 千住(せんじゅ)東京都足立区
水戸街道と結ぶ。 - 草加(そうか)埼玉県草加市
- 越ケ谷(こしがや)埼玉県越谷市
- 粕壁(かすかべ)埼玉県春日部市
- 杉戸(すぎと)埼玉県北葛飾郡
- 幸手(さって)埼玉県幸手市
日光御成道・筑波道と結ぶ。 - 栗橋(くりはし)埼玉県久喜市
- 中田(なかだ)茨城県古河市
- 古河(こが)茨城県古河市
古河城下。 - 野木(のぎ)栃木県下都賀郡
- 間々田(ままだ)栃木県小山市
- 小山(おやま)栃木県小山市
日光街道・壬生道・結城道・佐野道・栃木道と結ぶ。 - 新田(しんでん)栃木県小山市
- 小金井(こがねい)栃木県下野市
- 石橋(いしばし)栃木県下野市
- 雀宮(すずめのみや)栃木県宇都宮市
- 宇都宮(うつのみや)栃木県宇都宮市
日光街道・壬生道・鹿沼道・新里道・大谷道と結ぶ。
宇都宮城下。
五街道制定当時はここから白河までを奥州街道としていた様子。 - 白沢(しらさわ)栃木県河内郡
- 氏家(うじいえ)栃木県塩谷郡
- 喜連川(きつれがわ)栃木県塩谷郡
- 佐久山(さくやま)栃木県大田原市
- 大田原(おおたわら)栃木県大田原市
大田原城下。 - 鍋掛(なべかけ)栃木県黒磯市
- 越堀(こしぼり)栃木県黒磯市
- 芦野(あしの)栃木県那須郡
- 白坂(しらさか)福島県白河市
- 白河(しらかわ)福島県白河市
ここを境に街道を南北を分けて区別することが多かった。
白河城下。白河街道と結ぶ。 - 根田(ねだ)福島県白河市
- 小田川(おだがわ)福島県白河市
- 太田川(おおたがわ)福島県西白河郡
- 踏瀬(ふみせ)福島県西白河郡
- 大和久(おおわぐ)福島県西白河郡
水戸街道と結ぶ。 - 中畑新田(なかはたしんでん)福島県西白河郡
- 矢吹(やぶき)福島県西白河郡
水戸街道と結ぶ。 - 久来石(きゅうらいし)福島県岩瀬郡
- 笠石(かさいし)福島県岩瀬郡
- 須賀川(すかがわ)福島県須賀川市
御斎所街道・岩城街道と結ぶ。 - 笹川(ささがわ)福島県郡山市
- 日出山(ひでのやま)福島県郡山市
- 小原田(おはらだ)福島県郡山市
- 郡山(こおりやま)福島県郡山市
安積街道・岩城街道と結ぶ。 - 福原(ふくはら)福島県郡山市
- 日和田(ひわだ)福島県郡山市
岩城街道と結ぶ。 - 高倉(たかくら)福島県郡山市
- 本宮(もとみや)福島県本宮市
二本松街道・岩城街道と結ぶ。 - 南杉田(みなみすぎた)福島県二本松市
- 北杉田(きたすぎた)福島県二本松市
- 二本松(にほんまつ)福島県二本松市
二本松城下。 - 二本柳(にほんやなぎ)福島県二本松市
- 八丁目(はっちょうめ)福島県福島市
- 清水町(しみずまち)福島県福島市
- 若宮(わかみや)福島県福島市
- 福島(ふくしま)福島県福島市
福島城下。山王土湯道・米沢街道・中村街道・川俣街道と結ぶ。 - 瀬上(せがみ)福島県福島市
- 桑折(こおり)福島県伊達郡
羽州街道と結ぶ。 - 藤田(ふじた)福島県伊達郡
- 貝田(かいだ)福島県伊達郡
- 越河(こすごう)宮城県白石市
- 斎川(さいかわ)宮城県白石市
- 白石(しらいし)宮城県白石市
白石城下。 - 宮(みや)宮城県刈田郡
笹谷街道と結ぶ。 - 金ヶ瀬(かながせ)宮城県柴田郡
- 大河原(おおがわら)宮城県柴田郡
- 船迫(ふなばさま)宮城県柴田郡
- 槻木(つきのき)宮城県柴田郡
- 岩沼(いわぬま)宮城県岩沼市
陸前浜街道と結ぶ。 - 増田(ますだ)宮城県名取市
- 中田(なかた)宮城県仙台市
- 長町(ながまち)宮城県仙台市
- 仙台(せんだい)宮城県仙台市
仙台城下。 - 七北田(ななきた)宮城県仙台市
- 富谷(とみや)宮城県富谷市
- 吉岡(よしおか)宮城県黒川郡
- 三本木(さんぼんぎ)宮城県大崎市
- 古川(ふるかわ)宮城県大崎市
- 荒谷(あらや)宮城県大崎市
- 高清水(たかしみず)宮城県栗原市
- 築館(つきだて)宮城県栗原市
- 宮野(みやの)宮城県栗原市
- 沢辺(さわべ)宮城県栗原市
- 金成(かんなり)宮城県栗原市
- 有壁(ありかべ)宮城県栗原市
- 一関(いちのせき)岩手県一関市
- 山目(やまのめ)岩手県一関市
- 前沢(まえざわ)岩手県奥州市
- 水沢(みずさわ)岩手県奥州市
- 金ヶ崎(かながさき)岩手県胆沢郡
- 鬼柳(おにやなぎ)岩手県北上市
- 黒沢尻(くろさわじり)岩手県北上市
- 花巻(はなまき)岩手県花巻市
- 石鳥谷(いしどりや)岩手県花巻市
- 日詰郡山(ひづめこおりやま)岩手県紫波郡
- 盛岡(もりおか)岩手県盛岡市
盛岡城下。 - 渋民(しぶたみ)岩手県盛岡市
- 沼宮内(ぬまくない)岩手県岩手郡
- 一戸(いちのへ)岩手県二戸郡
- 福岡(ふくおか)岩手県二戸市
浄法寺街道・八戸街道と結ぶ。 - 金田一(きんだいち)岩手県二戸市
- 三戸(さんのへ)青森県三戸郡
三戸街道と結ぶ。 - 浅水(あさみず)青森県三戸郡
- 五戸(ごのへ)青森県三戸郡
- 伝法寺(でんぽうじ)青森県十和田市
- 藤島(ふじしま)青森県十和田市
- 七戸(しちのへ)青森県上北郡
- 野辺地(のへじ)青森県上北郡
- 馬門(まかど)青森県上北郡
- 小湊(こみなと)青森県東津軽郡
- 野内(のない)青森県青森市
- 青森(あおもり)青森県青森市
- 油川(あぶらかわ)青森県青森市
羽州街道と結ぶ。 - 平舘(たいらだて)青森県東津軽軍
- 三厩(みんまや)青森県東津軽郡
- 松前(まつまえ)北海道松前郡
- 箱館(はこだて)北海道函館市
札幌本道と結ぶ。
まとめ
この記事では、五街道のひとつである奥州街道についての概要や、その特徴についてまとめてみました。
尚、更に掘り下げて、ここに挙げてある各宿場などの記事もおいおい投稿していきたいと思っていますので、ご参照ください。
下記は、奥州街道以外の「五街道」をそれぞれまとめた記事です。
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