甲州街道 -江戸を陰で支えた富嶽の道-

甲州街道 彷徨うBonJin

甲州街道は「五街道」のひとつです。

五街道は、東海道・中山道・甲州街道・日光街道・奥州街道の総称です。
徳川家康が1601(慶長6)年からおよそ7年かかって整備した日本の幹線道路(主要街道)で、江戸幕府の道中奉行が管轄していました。
いずれも江戸・日本橋が起点で、特に江戸と京都を結ぶ表通りの東海道と、裏通りの中山道が重要視されました。

甲州街道の概要

甲州街道の特徴やその歴史沿革を簡単にみてみましょう。

五街道の最後に整備された徳川将軍の避難路?

甲州街道は、古甲州道(戦国期に「武蔵府中」と「甲斐府中」を結んだ道だが、古代からその存在の片りんが見られる)をもとにして、江戸幕府によって整備された五街道の1つです。
戦国時代には甲斐の国・武田信玄の栄枯盛衰劇が演じられた舞台でもありました。

江戸初期は「甲州海道」、18世紀初頭に幕令で「甲州道中」と呼称が変わり、その後徐々に甲州街道の呼称が定着していったようです。
江戸日本橋から八王子、甲府を経て信濃国の下諏訪宿で中山道と合流するまで44次の宿場が置かれ、その総延長は約210kmとされています(江戸から甲府までの37宿は甲州表街道、甲府から下諏訪までの7宿は甲州裏街道と呼ばれた)。

尚、甲州街道は当初、徳川家康の江戸入府に当たって、有事の際に甲府までの避難路として使用されることを想定して造成されたという逸話があります。
何事にも用心深く備える家康の真骨頂です。

参勤交代にはあまり利用されず

甲州街道の下諏訪から江戸までの総延長は中山道のそれより短くなっていますが、参勤交代に利用する大名も少なく(高島藩・高遠藩・飯田藩のみ)、物価が高かったこともあって中山道ほどの人の賑わいはなかったようです。
ただ、観光・文化散策のルートとしては結構な人気があったらしく、当時の甲州街道に関する資料(浮世絵・作品刊行物等)も多く残されています。

甲州街道が主役となったその時…

江戸幕府は、主に駅制整備を目的として五街道を整備したわけですが、先述したように甲州街道の場合は防衛や避難路としての役割を求められていたため、ルート上に位置する親藩の甲府藩(甲府城)の武力整備にも力を注ぐとともに街道沿いに砦として利用できる寺院を多く置き、隣接して同心屋敷も配置しました。
結局、家康のその慎重さが奏功したのか将軍避難路として甲州街道が利用されたことはありませんでしたが、後年皮肉なことに戊辰戦争(1868年)での最重要地点となった甲府城の陥落(板垣退助率いる東征政府軍が甲府城を攻め占領)が江戸城無血開城の直接のきっかけとなり、江戸幕府は名実ともに終焉を迎えることとなります。
徳川幕府の陰の備えだった甲州街道が、歴史上の陽を浴びたその瞬間に幕府を終わらせたのです。

甲州街道も江戸期の芸文表現者に愛された街道です。
風景版画「富嶽三十六景」の葛飾北斎をはじめ、安藤広重、十返舎一九、仮名垣魯文、松尾芭蕉などもその記録を多く残しています。

甲州街道 全体マップ・宿場一覧

宿場周辺は、各街道の特に重要なポイントで、今なお多くの歴史の跡を感じることができる場所です。
皆さんも宿場の近くを訪れることがあったら、是非この記事や付随する記事を簡易マニュアルとして活用し、歴史漫遊を楽しんでください。

甲州街道は、本州の内陸部、現在の東京都・神奈川県・山梨県・長野県のコースです。

全体マップ

各宿場のポイント(ピン)には、可能な限りその宿場の本陣・脇本陣(跡)を選ぶようにしました。

宿場一覧

日本橋(東京都)から下諏訪宿(長野県)までの間に44の宿場が設けられ、各宿場には明確な目的を持った様々な施設が用意されていました。
以下の一覧には、番号・宿場名・現在の所在地・その他の情報などを表記しています。

  1. 内藤新宿(ないとうしんじゅく)東京都新宿区
  2. 下高井戸(しもたかいど)東京都杉並区
  3. 上高井戸 (かみたかいど)東京都杉並区
  4. 国領(こくりょう)東京都調布市
    国領から上石原までは布田五宿と呼ばれる。
  5. 下布田(しもふだ)東京都調布市
  6. 上布田(かみふだ)東京都調布市
  7. 下石原(しもいしはら)東京都調布市
  8. 上石原(かみいしはら)東京都調布市
  9. 府中(ふちゅう)東京都府中市
  10. 日野(ひの)東京都日野市
  11. 八王子(はちおうじ)東京都八王子市
    日光脇往還と結ぶ。
  12. 駒木野(こまぎの)東京都八王子市
  13. 小原(おはら)神奈川県相模原市
  14. 与瀬(よせ)神奈川県相模原市
  15. 吉野(よしの) 神奈川県相模原市
  16. 関野(せきの)神奈川県相模原市
  17. 上野原(うえのはら)山梨県上野原市
  18. 鶴川(つるかわ)山梨県上野原市
  19. 野田尻(のだじり)山梨県上野原市
  20. 犬目(いぬめ)山梨県上野原市
  21. 下鳥沢(しもとりさわ)山梨県大月市
    上鳥沢との合宿。
  22. 上鳥沢(かみとりさわ)山梨県大月市
  23. 猿橋(さるはし)山梨県大月市
  24. 駒橋(こまはし)山梨県大月市
  25. 大月(おおつき)山梨県大月市
  26. 下花咲(しもはなさき)山梨県大月市
  27. 上花咲(かみはなさき)山梨県大月市
  28. 下初狩(しもはつかり)山梨県大月市
    中初狩との合宿
  29. 中初狩(なかはつかり)山梨県大月市
  30. 白野(しらの)山梨県大月市
  31. 阿弥陀海道(あみだかいどう)山梨県大月市
  32. 黒野田(くろのだ)山梨県大月市
  33. 駒飼(こまかい)山梨県甲州市
  34. 鶴瀬(つるせ)山梨県甲州市
  35. 勝沼(かつぬま)山梨県甲州市
  36. 栗原(くりはら)山梨県山梨市
  37. 石和(いさわ)山梨県笛吹市
  38. 甲府柳町(こうふやなぎまち)山梨県甲府市
    甲府城下。この甲府以降7宿は甲州裏街道と呼ばれた。
  39. 韮崎(にらさき)山梨県韮崎市
  40. 台ヶ原(だいがはら)山梨県北杜市
  41. 教来石(きょうらいいし)山梨県北杜市
  42. 蔦木宿(つたき)長野県諏訪郡
  43. 金沢(かなざわ)長野県茅野市
  44. 上諏訪(かみすわ)長野県諏訪市

まとめ

この記事では、五街道のひとつである甲州街道についての概要や、その特徴についてまとめてみました。
尚、更に掘り下げて、ここに挙げてある各宿場などの記事もおいおい投稿していきたいと思っていますので、ご参照ください。

下記は、甲州街道以外の「五街道」をそれぞれまとめた記事です。

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