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テニス 2019シーズン TOP20の敗戦からの切り取り考察
12月、ATPツアーレベルの大会は現在OFF。
バカンスを思い切り楽しんでいる者、休養・リハビリに努める者、更なるトレーニングを重ねる者、イベントに多忙な者…選手たちはめいめいに短い休暇を過ごしていますが、皆、既に来年のシーズンを睨みながらのことと思われます。
さて、今回は簡単な考察で、2019年の「敗戦」に注目してみます。
ズバリ、トーナメントの「緒戦(初戦)敗退」。
皆、緒戦(初戦)は負けたくない!
負けたら即大会終了。どのレベルの大会であっても、皆トーナメントの緒戦は負けたくないものです。
増してやATPツアーは文字通りワールドツアー。
長旅を経てようやく着いた都市(国)の大会で、早々に退散するのは精神的にもとてもつらいことだと思います。
しかし、その移動などの疲労の影響も少なくないことと、早期敗退を避けたいが故の様々なプレッシャーもあるようで、あのR.フェデラーでさえ「大会の初めの試合はいつも非常に難しい」としばしば語っているのを耳にします。
今回、筆者が興味を持ったのはその部分で、トップ選手たちはシーズン中どのくらい緒戦(初戦)敗退をしているのかというところです。
我ながらいやらしい数字の切り取りだと思いますが、ご容赦ください。具体的に、現時点でのトップ20選手の2019年の戦績とともに並べてみたいと思います。
2019年末ランキング トップ20選手 マッチ戦績と緒戦(初戦)敗退回数
「ランキング」「氏名」と、その下に「2019年トーナメントのマッチ勝敗」「緒戦(初戦)敗退回数(リーグ戦要素のあるデビスカップ、レーバーカップ、ATPファイナルズは除外)」の表記です。
また、「緒戦(初戦)」としてあるのは、大会シードにより1回戦BYE(免除)の場合には2回戦を初戦とみなしているためです。
- R.ナダル
58勝7敗 0回 - N.ジョコビッチ
57勝11敗 0回 - R.フェデラー
53勝10敗 0回 - D.ティエム
49勝19敗 5回 - D.メドベージェフ
59勝21敗 6回 - S.チチパス
54勝25敗 8回 - A.ズベレフ
44勝25敗 7回 - M.ベレッティーニ
43勝25敗 8回 - R.B.アグート
42勝22敗 5回 - G.モンフィス
37勝19敗 7回 - D.ゴフィン
36勝27敗 11回 - F.フォニーニ
30勝24敗 9回 - 錦織圭
29勝14敗 4回 - D.シュワルツマン
40勝26敗 5回 - D.シャポバロフ
38勝28敗 11回 - S.ワウリンカ
33勝19敗 4回 - K.カチャノフ
30勝29敗 13回 - A.デミノー
41勝20敗 9回 - J.イスナー
30勝18敗 5回 - G.ディミトロフ
22勝21敗 8回
改めて、さすがBIG3!そして…錦織も
まずは緒戦敗退の少ない選手の面々、そう、テニス星人たちはやはり次元が違います。
年末ランキング1位を奪取したナダルは勝率でもトップの89.2%、そして緒戦敗退は皆無です。
そしてジョコビッチの勝率は83.8%、フェデラーが84.1%で、両名とも緒戦敗退は記録していません。
トップ20選手の中で緒戦敗退が0回なのはこの3人だけです。つくづく、この3人はどこを切り取っても人外の強さが浮き彫りになるだけですね。
尊敬とため息しかありません。
初戦敗退の少ない選手、次点は4回で錦織、ワウリンカとなっています。
錦織の負荷の多くかかる身体で、地の利も少ない環境にありながらも長くトップランカーを続けている理由のひとつがこういうことなのですね。
今シーズン、ツアー離脱前に夏場からの早期敗退が続いたことや、我々応援する側の身びいき残念指数が高いこともあって各トーナメントの初めから喪失感を多く感じていたような気もしますが、他の同クラス選手よりもトーナメントに長く参加していました。
また、振り返れば何よりグランドスラムでの奮闘は刮目に値します。
ワウリンカも故障とも戦いながら頑張ったシーズンでした。2018年の遅れ(2018年末ランキングは66位)を取り戻すべく、彼らしい見せ場は作ったのではないかと思います。
両名ともども改めてリスペクトの念が湧いてきます。
考えようによっては、緒戦をなんとか取りきることによって自身の力とコンディションを調整し、そのトーナメントを上位まで戦い抜く勢いにすることができる選手が結果を残すのではないかという気もしてきました。
そしてその能力が際立っているのがやはりBIG3なのではないでしょうか。
評価の難しい緒戦敗退ワースト
次にワースト記録、緒戦敗退の多かった選手の1位は13回のカチャノフでした。
そして11回を記録したのがゴフィンとシャポバロフ、9回のフォニーニに続きます。
2019年のカチャノフはデビスカップを除いてはツアー26大会に出場していますから実に半分の大会で緒戦敗退です(勝率は50.8%)。2018年同時期比でもランキングは落としており、タイトルもありませんでした。
前年に覚醒、好調のイメージが強かったため2019年は確かにあまり調子は良くないイメージはありましたがやはりかなり苦労していたのですね。
ゴフィンは2018年からのケガなどの影響でコンディション調整には苦しんでいたと思います。
ただ、グランドスラムでの早期敗退がなかったことでランキングを大きく落とすことはありませんでした。勝率は57.7%、ここぞという時の集中力はさすがでした。
シャポバロフは波の多いシーズンでしたが、それでもツアー初タイトルも挙げましたし、ランキング的には飛躍のシーズンでした(勝率は57.7%)。
若さでトライ&エラーを多く繰り返し、実力をつけているのでしょう。こういう選手は更に強くなる気がします。
勝者のメンタリティを持つことが重要
緒戦敗退の多さと実力の相関関係はデータ上それほど関連はないように思います。
ただ、冒頭で述べたように、ランキングポイントのロストという点以上にメンタル的にダメージが大きいので、皆やはり早期敗退は避けたいところでしょう。
勝負事には自信が何よりも大切。
自信を維持するためには緒戦をとること、連敗をしないことが重要です。
人生も同じことが言えますね(- -)。
最後に、ワウリンカの前腕にあるタトゥーの文字、サミュエル・ベケットの言葉を置いておきます。
Ever tried. Ever failed. No matter.
Try again. Fail again.
Fail better.
(何度も挑戦した。何度も失敗した。でも気にすることはない。また挑戦する。また失敗する。でも前よりうまく失敗しよう。)
