2019 グランドスラム 全豪オープン13日目、女子 決勝、2019年序盤の女王が決まります。
大会ドロー(トーナメント表)はこちら↓

両者とも、この試合に勝てば、初の全豪オープン女王となるだけでなく、初のWTA世界ランキング1位の栄冠も勝ち取ることになります。
まさに女子テニスの世界の頂点を手に入れるという、恐ろしいほどの栄誉です。
今回も、まずプレビューとして本稿を揚げ、結果を追記する方法でひとつの記事とします。
よろしければご再訪ください。
全豪オープン 女子シングルス 決勝
大坂なおみ(4) vs P.クビトバ(8)
76 57 64
クビトバは、チェコ出身の28歳。
身長182cm、左利き、バックハンド・ストロークは両手打ち。
自己最高ランキングは2位(2011、2012、2015)。
これまでにWTAツアーでシングルス26勝を挙げており、うちウィンブルドンの優勝が2回(2011、2014)あります。
2006年にプロ転向以来、順調にエリートキャリアを形成してきましたが、2016年末、自宅で不法侵入した男に襲撃され、利き手の左手に重傷を負わされてしまうという不運に見舞われてしまいます。
神経を修復する手術を受け、復帰まで半年以上要しました。
当然、ケガのショックと共に精神的な影響も危惧されましたが、2017年全仏オープンでの復帰緒戦での勝利を挙げ、ファンを喜ばせました。
長期欠場の影響もあり、同年はランキングを20位台に落としましたが、2018年には完全復活を印象付ける活躍でトップ10に返り咲き、2019年もいきなりシドニー国際で優勝を遂げました。
更にクビトバは、今大会、M.リバリコバ、I.ペグ、B.ベンチッチ、A.エイニシモバ、A.バーティ、D.コリンズらを、1セットも落とさずに降して決勝まで進んでおり、まさしく今は絶好調モードとも言えます。
クビトバの上記のケガの時期と、大坂のツアーでの活躍が目立ち始めた時期が重なったこともあって、これまでの対戦はありませんでした。
元々の実績、実力と絶好調に加え、左利きの優位もあります。
ただ、大坂も、つい数ヶ月前の全米オープン制覇の実績と、未だ上限値の見えない超進化途上の勢いがあります。
ブッキングレートではクビトバ有利の声も多く、タフマッチになると思いますが、大坂はこの試合でも未知なる進化を見せてくれるものと信じたい。
1/26(土) 日本時間17:30 ロッドレーバーアリーナで試合開始です。
[結果追記:2018/01/26]
まだ、ピンときていません。
本人はどうなのでしょうか。
大坂なおみが、グランドスラム2連覇、男女併せてアジア人初の世界ランキング1位を同時に達成してしまいました(正確には、1月28日の週をもって1位)。
大坂はこれでツアーレベル優勝は、3回目…。
たったの3回…。うち2回がグランドスラム。
究極の省エネです。
第1セットは、緊張のキープが続きました。
大坂は、クビトバのレフティ特有の角度のある切れるスライスサーブに手こずります。
サービスゲームが重い、緊張の展開になりました。
そして、大坂は5本、クビトバは3本のブレイクポイントをそれぞれセーブし、タイブレークへ。
このショートゲームでは、先行サービスの大坂が最初のポイントをものにすると、クビトバの最初のサービスを見事なダウンザラインへのリターンエースでミニブレイク。
このポイントで流れをつかんだ大坂がその後も攻め抜き、1セットアップ。
第2セット、後がないクビトバも猛攻をしかけ、第2ゲームでこの試合、両者を通じ初のブレイク。
しかし、セットアップしている大坂は、怯まず第3ゲームをすぐブレイクバックすると後の3ゲームも連続で奪い逆転リードに成功します。
そして、大坂の53で迎えたリターン第9ゲーム、ここでも攻撃の冴える大坂は遂にトリプルのチャンピオンシップポイント(0-40)を掴みます。
が、そこからクビトバの捨て身の5連続ポイントを止めることができずに大チャンスを逃します。
試合は明らかに流れが変わり、今度はクビトバの4連続ゲーム奪取でなんとセットタイ。第12ゲームは、動揺を隠せない大坂のダブルフォルトでセットを献上してしまいました。
この場面(第9ゲーム以降)、そもそも大坂が大きなミスをしたとは言えませんが、やはり、スムーズに行くはずだったマッチポイントを逃した落胆の気持ちが、身体のメカニズムを微妙に狂わせました。そして、その狂いに対する自身の苛立ちが、更にメンタルを乱す負の連鎖を起こし、セットダウン時には、我々は大坂の涙を見ることになります。
正直、観ていた我々も狼狽するほどの急激な流れの変化でした。
頭からすっぽりタオルを被り、休憩でコートを離れた大坂、幾分落ち着いた表情で戻ります。
第3セット、クビトバからのサービスで第1ゲーム、第2ゲームを互いにキープ。
まだ、流れは大坂のものとは言えないまでも、目に光の戻ってきた大坂が新たな覚悟でゲームに望んでいる様は窺えます。
そして、少し攻め疲れもあったか、クビトバがダブルフォルトを犯した第3ゲーム、チャンスを逃さず大坂が久しぶりのブレイクをものにします。
その後、お互いメンタル勝負を我慢で凌ぎ、大坂のサービング・フォー・チャンピオンシップ、第10ゲーム。
40-15からのサービスがクビトバのラケットを弾き、決着。
遂に全米オープンに続く大舞台を制しました。
激闘でした。
流れが反転するということは恐ろしいもので、何をやっても、ほんの数センチが味方をしてくれません。
ただ、このような大舞台で、全米のS.ウィリアムス戦ではなかったような、別の意味で痺れる場面を経験し、大坂がそれを自身の力で乗り越えたことは本当に大きな財産になったと思います。
大坂は、第3セットでは、それまで勢いも手伝って、良く言えば自分を鼓舞し、感情を露にしていたスタイルから、表情や表現をむしろ消しました。
最初は、落胆のあまりテンションが下がったのかと心配になりました。
何か、淡々と作業を進めるようなイメージでしょうか。
恐らく、勢いやノリに任せていた自身をできるだけ抑え、冷静さを保つことに注力するべく選択した変化のかたちではなかったかと私は思います。
だとすれば、それはそれで恐ろしいほどのメンタル制御能力であり、どんなショットにも勝る武器の進化ではないでしょうか。
そう言えば、準決勝のKa.プリスコバ戦の前に、大坂は、彼女のような冷静な振る舞いに憧れているという旨の発言があったことを思い出しました。
また、公式のインタビュー(4歳発言のあった場だったかもしれません)でも、勝つことと共に人間として成長したいとも真顔で発言していました。
普通、メディアなどを前にした発言などは、我々のようなひねたおとなは社交辞令やリップサービスが織り交ぜられたものであることを前提として理解しようとします。
しかし、改めて思い起こしてみると、本当に彼女の言葉には、虚飾や単純なサービスはないのかもしれません。
日清食品の広告アニメの騒ぎの質問に関しても、まっすぐに受け止めて、率直でごまかしのない堂々としたコメントを出し、それが故にかえって誰も傷つかない結末に問題を導いたかたちです。
自称4歳児のメンタルという21歳の言葉の断片が、それを笑って聞いていた私に今、突き刺さります。
いや、もう脱帽です。
祝辞ではなく、感謝です。
クビトバも見事なファイト、本当によくぞここまで戻ってきました。